House of M

『雀が丘』

サミュエル・H・バロン著、白石治朗訳 『プレハーノフ―ロシア・マルクス主義の父』より語調に多少の修正を加えほぼ原文を引用

<糖衣錠宣言 Manifest der Dragées>

2019年11月7日10月革命102周年記念日を迎え、実存したヨーロッパマルクス主義思想家・活動家及びそれに関連する人物の表象としてのキャラクターデザイン102種をパブリックドメインとして宣言し、ここに配布します。当デザインを利用した原著作者の作品を別途の承諾なしに複製・配布・加工その他二次創作することを許可し、また当デザインの商業利用を可能とします。その他の利用規約については下記の内容を参照してください。
（キャラクターデザイン一覧の彩色は匿名希望のフォロワーさんに手伝って頂きました。謹んで感謝いたします。）

<配布者が原作者ではないデザインについて>

公開した一覧表の右側最上段の欄にある二人のキャラクターデザインは配布者オリアナ（@）ではなく、まるま院（@）がデザインしたものです。利用規約はオリアナのものと同じとします。

<キャラクターデザイン及びデザインを使用した作品の商業利用について>
商業利用を可能としたのはキャラクターデザインであり、それを使用した創作物ではないことにご注意ください。キャラクターデザインを用いて新たに創作した創作物や、原著作者が創作した作品に独自の解釈を加え創作した二次創作物は、二次創作者本人が営利目的に利用しても構いません。原著作者が創作したイラスト・漫画その他の創作物を原著作者の利用許諾なくそのまま複製または一部抜粋して収益を得ることは、オリアナの作品とまるま院の作品を問わず禁止します。営利目的ではない、単純な複製・配布・加工は、キャラデザとキャラデザを用いた創作物両方において全面的に許可します。

<キャラクターデザイン及びデザインを使用した作品を利用し、できることの例>
1. マルクス主義テキストを読むとき脳内で人物の顔を置き換える
今まさにマルクス主義に入門しようと挑みつつある21世紀のオタクが何言ってんだかさっぱりわからんマルクス主義テキストを耐え抜くためには、漫画的作法に基づいて製作されたキャラクターデザインという糖衣を着せる行為（まあ所謂萌え化とか美化とか言われるやつです）がそれなりに有効であることを配布者は身をもって実感しました。このように難しい内容を簡単に受け入れるよう助ける情報のパッケージングと伝達機能は、漫画という媒体が本来持つ主要な機能です。このささやかな配布行為のやたら大げさな名称<糖衣錠宣言Manifest der Dragées>は、配布者自身の漫画的デザインが成すべきと望む機能に基づいて名付けられました。

2. 配布されたキャラデザを用いて創作する

マルクス主義テキストをなんとか読むのに成功し、なんだマルクス主義ってちょっと面白いジャン…とか思ってくれたのならば、脳内で世話になったキャラデザを利用して創作してくださっても構いません。してください(圧)。配布者がより己の意思表明に適したコピーレフトの代わりにパブリックドメイン規約を採択したのは、私たちがまだ資本主義社会に住んでいるからに他なりません。資本主義社会では金になる実質的可能性が全くない創作物を作るのはちょっと…モチベが上がりませんよね。

3. 配布されたキャラデザの内気に入らないところを修正する

配布された内一部のキャラデザはあなたの趣味にぴったり合い、元ネタの人物をよく表象していると感じられるかもしれません。また一部のキャラデザはそうでもないし微妙だな、と感じられるかもしれません。例えばレーニンがハゲてないのがあなたは気に入らなかったり、せめて実際彼の髪の色と知られている赤毛ならよかったと思うかもしれません。だからといってまったく新しいデザインを作り出すのは面倒くさかったり、髪の毛以外の部分は気に入ってたり、レーニンは微妙だけどローザは気に入ったから一緒に描きたいと思ってしまったら？迷わず修正しましょう。糖衣錠の色をちょっと変えたからといってあなたを修正主義者と罵る人は…うん…いるかもしれないけど…少なくとも配布者はそんなことしませんから。

4. 配布されたキャラデザ一覧に含まれていないキャラクターを新たにデザインし、既存のキャラデザと共に扱う
102人という数字は非常に多く見えますが、このキャラデザ一覧はマルクス主義の歴史の中で重要な存在感を放つ出来事と人物、地域に触れきれていません。あなたは中国や南米、その他の地域のマルクス主義者の表象を新たにデザインし任意で糖衣錠リストに追加してもよいでしょう。配布者も能力の及ぶ限りそうできるよう努めます。

5. 配布されたキャラデザを用いて創られた配布者の創作物を読んで全く異なる解釈を持ったり、表現する
配布者であるオリアナは、自分自身がデザインしたキャラデザを用いて歴史的事実にそれなりに忠実な漫画を描いたり、歴史的事実を任意に切り取り全く別の世界観を作って、それに基づいた漫画を描いたりしています。要するに歴史創作の類ですが、そのような創作物は<House of M>という題名のもと個人ブログ（リンク：houseofm.tistory.com）にアーカイブされています。

あなたが偶然そのリンク先の作品を読むことになっても、そこにあるものはマルクス主義の歴史のある断面に対する任意の解釈のそれまた断面に過ぎないということを忘れないでください。あなたはそこでただ一つの完結した体系も、くまなく織り込まれた緻密なあらすじも発見することはできないでしょう。あなたが配布者のブログで何かを探し出すことになったとしても、それを<原作>の位置に置き、＜原作者＞に忖度し、あなた自身の解釈を検閲することは、配布者が望むところではありません。

これが配布者が自分自身のキャラクターデザインと、それを使用し創り出した作品を分離した理由です。最初から最後まで自分が作りだしたお話と、それに登場する人物たちを織りした<原作者>であれば、自分の創作物に纏わる自分自身の解釈だけを唯一の正しいものと宣言し、それに従う者にだけ自分のキャラクターデザインの利用を許可する余地もあるでしょう。しかし配布者は歴史が人類に残したものを享受する一個人にすぎないのです。自分の解釈を自由に表現することができるという点では、キャラデザを使用していただく他の人以上の権利も権威も配布者は持ちません。そうあることを願って、配布者は自身の創造力を以て手掛けた唯一の部分であるキャラクターデザインに関する排他的権利を放棄することをここに再度宣言します。

6.  配布されたキャラデザを利用し、低俗で芸術的価値のない落書きを楽しみ、マルクス主義の歴史を軽く扱う
配布者が年中やってることですね。これを良しとしない教条主義的自称マルクス主義者とは言葉を交える価値などありません。

<おわりに>
上記したすべてのことは、私が皆さんに特別な寛大さをもって許し与えた権利などではありません。私がパブリックドメインという名の下に私のデザインを公開した以上、この文章を読んでいるあなたが当然として持つ権利です。あなたが持つ権利には自由な解釈をする権利、あなた自身の創作物を通してその解釈を表現する権利など、創作者が排他的権利を放棄したわけではない作品の読者にも本来存在する権利だって含まれています。この事実をまったく知らないか、もしくは忘れている人が往々として存在します。私はこれを遺憾に思い、私のデザインがこれからマルクス主義と出会う人たちに小さな糖衣錠となることを、彼らがマルクス主義を楽しく享受し、また余裕がある場合は探求し、それによってマルクス主義をより豊かにすることを、何よりも、彼ら自身のマルクス主義を探しだせることを切に希望します。

2019年11月7日 <糖衣錠宣言 Manifest der Dragées> 配布者オリアナ